1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/09/25 03:33:34 ID:wHmE+W5f0
咲「……何を言っているんですか?原村さん」
和「だって、最近は部室に来ても…なんだかおかしな麻雀を打つし」
咲「……私は色々と打ち方を試してるだけですよ。…調整しないといけないし」
和「嘘っ!…あの時、あの時から…そう」
それは、私達が特訓と称して行っていた…マンション麻雀での事。
あの時、私は狂ったように打っていた。そして勝っていた。勝った。勝った。勝った!
………けど、最後には負けた。………負けた。けど、強くなった気はした
3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/09/25 03:37:33 ID:wHmE+W5f0
私は実際、見る視点や全てが変わった気がした。…けど、それ以上に…私の……私の大切な……
咲「原村さん。私はどこも変じゃないよ!…ほら、いつもの私!」
嘘。…だって、かすかに…タバコのにおいがする。
マンション麻雀でいつも嗅いでいた、あの独特の臭い。
あの時は気にもしなかった。いや、心地よくも感じていた甘い臭い。
私も早く吸いたい。それで落ち着けるなら…。などとまやかしを覚えたが、今では冷静な判断が下せる。
寿命を縮めてまで麻雀を打つのは私は嫌だ。それなら麻雀を打つ。
和「宮永さん。…お願いします。正直に言ってください」
咲「しつこいなぁ。……でもね、ダーメ。……原村さんにはわからない。ううん、分からせない」
和「それってどういう…!?」
4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/09/25 03:41:40 ID:wHmE+W5f0
和「私を危険な目に遭わせない…って事…?」
あり得る。優しい彼女なら…そういう
咲「違うよ。……やっぱり、甘いんだね」
和「え!?」
咲「そんな甘さがあるから…負けたんだよ。原村さん。やっぱり今の原村さんには…教えられないなぁ」
和「そんな…」
一体、彼女を何が変えたの?私はそれを純粋に知りたいだけなのに…。
私はもう、宮永さんんを救えないのかな?私はただ、あなたを見ているだけ…なの?
和「お願い。…見せてくれるだけ、見せてくれるだけでいいから。ねえ!」
咲「……しつこい。……はぁ。まあ、いいよ。見てるだけなら」
7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/09/25 03:45:23 ID:wHmE+W5f0
和「ほ、ホント?」
よかった、よかった。よかった!!…私の言葉が、ようやく彼女の心に届いた!
私は彼女を救える。彼女は私しか救えない。そう、私が…宮永 咲を救う!
ねえ。だから、私に対してそんな目をしているんでしょう?
笑っているけど、まるで目の奥に闇を隠し持っているような。
まるで、そこには空虚な心しかないようで。お目当てのものは私じゃない。
そんな目をしてるけど…それは、私に助けてほしいからなんだよね?
ねえ、宮永さん…。お願い、輝いていた目に戻って。…お願い、怖い目をしないで
8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/09/25 03:50:02 ID:wHmE+W5f0
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咲「……打てますか?」
和「あの、宮永さんここ……」
そうだ、ここは…私は最近までここに来さされていた。いや、途中からここに来ることに快感を覚え
私はここに楽しくて仕方なくて…来ていた。金を積み上げる幸福に酔いしれて…。
マスター「もうちょっと待ってください。…あそこ、ワン欠けしそうですから」
咲「そう、ですか」
和「あ、あのだから宮永さん」
咲「原村さん」
和「え?」
咲「約束通り、見ておいてくださいね。……これが、私の麻雀です」
嫌な予感がする。…いや、ずっとしていた。ここに来てから。そして、卓に座っている一人の男を見ている時から…
9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/09/25 03:54:39 ID:wHmE+W5f0
黒服の男「…ツモ。終了ですね」
チャラい男「カーッ!きっついあがりかただなぁ…」
胡散臭い男「相変わらず…だな。マスター。言ってたとおり俺抜けるわ」
マスター「はい…それでは、どうぞ」
咲「…ありがとうございます。……では」
やめて……やめて……やめて……やめて……!そこに座らないで。そこに座っちゃダメ!
その人は…分かる。そう、その人は……駄目。それ以上は……
和「みや……」
咲「」ジッ
和「あ……」
なんて……なんて目なんだろう。あんな目…私は無理。怖くて、そして奥が見えない。
けど…彼女は楽しんでる。今を楽しんでる。………なんで、なんでなの?
10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/09/25 04:01:16 ID:wHmE+W5f0
チャラい男「…あれ?オッサン抜けんの!?」
胡散臭い男「まあな。…その前にはアンタにこっぴどくやられてんだ。今日はオケラだよ、オケラ」
チャラい男「そっかー。そりゃそうだよねー。…よし、オイラもそろそろぬけっかな」
マスター「抜け、ですか」
チャラい男「そそ。…マスターも見たでしょ、あのきっつ~いあがり。…それとも、代わりにマスター打ってくれる?」
マスター「遠慮しておきます…」
チャラい男「そーゆー事!それにオイラは今から大事な用事があるし…悪いね!」
咲「いいえ、大丈夫ですよ」
宮永さんはあんなチャラ男みてない。…見てるのは、対面の黒い服の男だけ。
知ってるはず…。あの男が、どれだけの男か。宮永さん、アナタ……知ってますよね?
眼鏡の男「じゃあ私も抜けようかな…。実は私も一回がギリだったし」
チャラい男「一回かー。…万札しか肌身につけたくないオイラだったら……今の状況なら……逃げてるわな」
11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/09/25 04:06:23 ID:wHmE+W5f0
マスター「困りましたね…。三人抜けですか」
咲「大丈夫ですよ。お客さんはすぐきますよ。…こういう日には」
マスター「はぁ」
マスターもよく分からないという顔をしている。そりゃそうだろう。…一体、何が分かるというの?宮永さん
そんなことよりも…私は逃げ出したいっていうのに…。どうして、アナタは平気なの?……
カランコロンカラン
老人「打てる……かな?」
マスター「少々お待ちしていただけましたら…」
この人、なんだろう。…普通のおじいちゃんって感じじゃないけど…。以前、私が打った人に…感じが似てる。
優しさの中に強さがあるっていうか…。なんだか…温かい
老人「普段はこういうところに来ないんだが…。なんだか勘が働いてね」
黒い服の男「………」
咲「……そう、ですか」
12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/09/25 04:11:01 ID:wHmE+W5f0
宮永さんは見ていない。あの人を…。どうして?どうして見ないの…?
どうして…対面の人ばかり。…いや、理由は分かってる。アナタが今、勝ちたい人。打ちたい人は…目の前の男。
老人「?……お嬢ちゃんは、打たないのかい?」
マスター「彼女は宮永さんの付き添いだそうです」
老人「そうか。…残念。結構いい線いってると思うんだが…」
咲「いい線か…フフ。そうですね、いい線いってると思いますよ、彼女」
老人「?」
咲「でも…決定的に足らない物がある。私にはあって、彼女にはない…ものが」
老人「ほー」
咲「それがわかれば…良いんですけどね」
どうしちゃったの?どうしちゃったの宮永さん…。どうして、どうしてそんな事…。怖い、怖いよ
嫌だ。まるで宮永さん…遠くにいっちゃってるみたいで、嫌だ!…お願い、誰か、誰か助けて…
カランコロンカラン
13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/09/25 04:20:18 ID:wHmE+W5f0
派手な男「……打てるかよ」
マスター「丁度…今から始まります。どうですか?」
派手な男「ほー…三人そろってんのかよ。それなら入らないわけにはいかねぇな」
マスター「ではどうぞ」
老人「お前さん…。派手な格好しとるな」
派手な男「仕事柄な。…そこの兄さんみたいに葬式ムードじゃないだけマシだろ」
葬式…か。確かにそうかもしれない。誰かを地獄に叩き落とす…葬式
咲「では…始めましょうか。…宮永です」
派手な男「自己紹介すんのかい。…俺は堂嶋ってんだ」
老人「自己紹介するのも礼儀。…新満だよ」
黒服の男「傀と呼ばれています。…はじめますね」
始まる。…地獄のように熱く。そして鋭い寒さが襲う夜が…
14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/09/25 04:26:13 ID:wHmE+W5f0
勝負は一瞬。その瞬間に、全て決まる…
宮永「……」チャキ
宮永(ここで2萬をツモってきた…。普段なら遠慮なしに捨てるけど…なんか、嫌だな)
堂嶋「……」
新満(お嬢ちゃんがさっそく何かを感じたのか。…さて、どうでるのかな)
咲「…」タッ
堂嶋「へぇ、強気に6筒か」
新満(強気…というよりも、回避というべきか)
堂嶋「…お。ツモ2000 4000だな」
咲(やはり…2萬はあたる。…しかも高目か)
どうしてだろう。…宮永さんだけじゃない、皆が牌を切るたびに…心臓の音が大きく聞こえる気がする。
なぜ?…なぜなんだろう。…私の心が、まるで何かを求めているみたいに
咲(…分かった?原村さん、これが…私の求め、そして手に入れたもの。…そう、アナタには無理よ)
15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/09/25 04:31:42 ID:wHmE+W5f0
誰も見ていないなら、適当に締めて寝ようかしら。ま、深夜だから人少ないよね…
咲(さっきツモったぐらいで…いい気になれるかしら?)
堂嶋「…よし、いい感じだ」
新満(この男…かなりの運を感じる。いや、それだけじゃない…この力)
咲(まるで傍若無人と言わんばかり…。けど、それじゃあ私にはかなわない)
タンッ
咲(さっさと…私のチートイで静まって)
チートイ。…前の宮永さんならあり得ない役。嶺上を愛する宮永さんなら…。
なのにどうして…何が変わったっていうの?宮永さん
堂嶋(…なんだ?この雰囲気。…そうか、そういう事か)
タンッ
新満(……なるほど、こいつはいい。…瞬といい勝負…いや、下手したらそれ以上かもしれん)
傀「………フ」タンッ
16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/09/25 04:35:39 ID:wHmE+W5f0
咲(傀からこぼれ出た…。でも、いけない。ここでリズムを崩すと…足元をすくわれる)
新満(あがらず…。なるほど、一点集中。…それは正解と言えるのか)
どうして?どうして傀からなのに!?どうしてあがらないの!?そんなの…おかしいよ!
そんな麻雀、宮永さんはしていないはず!…これが、アナタの見せたかったものなの?
堂嶋「…舐めてんじゃねーぞ」ボソッ
咲「え?」
堂嶋「…舐めてると、痛い目に遭うぜって言ってんだよ」
17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/09/25 04:39:19 ID:wHmE+W5f0
咲「…ふふ。初対面の人に、そんなこと言われても」
新満「兄ちゃん……」
堂嶋「まー……見てな」
咲「ふふ。…どうぞ勝手に。とにかく、私からあがってから言ってください」タンッ
堂嶋「じゃあ言うぜ」
パタンッ
堂嶋「ロン」
咲「……え?」
堂嶋「…嬢ちゃん。麻雀舐めてんじゃねぇよ」
…当たった。宮永さんが。当たった。…傀との勝負を楽しんでいる宮永さんが…他の人から
18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/09/25 04:43:59 ID:wHmE+W5f0
咲「…べ、別に私は舐めてなんて…!」
カラカラカラ
堂嶋「そうか?…さっき、この傀っていうニーちゃんからあがらなかったろ?」
咲「何を根拠に…!」
堂嶋「分かんだよ。俺はな…。お前、リズム作るためにわざと…だな」
咲「…く。私はそんな」タンッ
堂嶋「……言い訳だな。…そんなリズムだなんたら…。ちっちぇ遊びだな」
咲「な、なん……!これは私が今まで勝ってきた、確かな物なんです…」タンッ
堂嶋「そうかい。…なら俺には勝てねぇよ」
咲「…え?」
堂嶋「俺は今…麻雀やってんだよ、嬢ちゃん」
咲「な、何を言って…」タンッ
新満「ロン」
19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/09/25 04:54:48 ID:wHmE+W5f0
新満「……そうだな、確かに…麻雀をやっておる。ここにいる…最低でも三人はな」
咲「三人?…何を言って…」
新満「黒い服の兄ちゃんは種類が別しても…。この三人は麻雀をしておる。…だが嬢ちゃんはどうだ?」
咲「……つ、次の局。次の局です!」
堂嶋「この黒服の兄ちゃん倒すのに必死で…。まるで麻雀していねぇ。…それじゃあ死ぬぜ」
新満「そして、ここにいる三人は殺せんじゃろうて」
咲「く…な、何を。何を言って……!」タンッ
堂嶋「事実だよ。…今のアンタじゃ…俺達は殺せない」
咲「うるさい…うるさい。…私は全てを捨てたんだ。強く、強くなったんだ…」
宮永さんが…葛藤してる。…何が?どうしたの?
咲「私は…私は……」
堂嶋「麻雀のやり方…間違ってるぜ。なあ」
傀「ご無礼…ロンです」
咲「!……あ……つ…ついに…言わせてしまった……」
傀さんのご無礼。…それが出れば終わり。そう、宮永さんは終わったんだ。今、この瞬間に
20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/09/25 05:00:33 ID:wHmE+W5f0
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和「…ごめんなさい、宮永さん」
咲「……」
和「私が…見たいと言ったから…きっと、無理したんですよね」
咲「……ご………さ……」
和「…え?」
咲「……ごめんなさい。…ごめんなさい。…ごめなんなさい」
雨が降る帰り道。まだ札束がいくつもも入っている鞄を抱えている宮永さん。
そのかばんは雨だけではなく…。彼女の涙でぬれいていた。
彼女の札束は…彼女の涙でぬれていく。…その涙は、一体何の涙なんだろう。
悔しさ?みじめさ?悲しさ?それとも謝罪?うれし泣き?それとも……
でも分かった。これで、宮永さんは前の彼女に戻っている。…そんな気がした。
そんな気が、した
21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/09/25 05:04:52 ID:wHmE+W5f0
けど、私は知っている。決して、狂った夜は終わらない。
ギャンブルがある限り、麻雀がある限り…。終わりやしない。
私はそれを知りつつ、今日も麻雀を打つ。最高の親友たちと共に…。
===============================
マスター「…いらっしゃりましたよ、どうぞ」
少年「ようやく面子がそろいましたか。…はじめましょう」
白髪の少年「…よろしく。アカギってもんだ」
少年「Kです。こちらこそ」
傀「傀…と呼ばれています」
和「原村…です。よろしく」
……そう、狂った夜は終わらない。そしていつどこで始まるかもわからない。私が麻雀を打つ限り…。
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