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ヤムチャ「ジョークぐらい言わせろよ・・・な。」
[ 2013年09月29日 14:00 ]
カテゴリ:
ドラゴンボール
1:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2008/12/15(月) 04:35:06.74
ID:A0qppQAI0
俺はそう言った後、かつて愛し合っていた相手に
安いコーヒー代を渡して、上品な喫茶店を後にした。
これは、今までの思い出代・・なんてつまらない事は言わない。
きっと言ったって、アイツは俺を止めなかっただろう。
外に出ると、雨が降っていた。
梅雨らしい、蒸し暑い温度と生ぬるい雨が俺を濡らす
・・・今日は、歩いて帰ろう。
丁度、女房役のお供も居ない。
知り合いが居ないこの街を俺は嬉しく思った。
今見られたら、なんて言えばいいかなんて俺にはわからない。
ブルマにしては気をきかせてくれたんだな・・。と、惚れていた女を無理に褒めてみた。
雨は一層激しくなるばかりだ。
早く帰らないと、そう思う反面、足は重い。
歩きながら俺は、静かに昔を思い出していた・・・。
3:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2008/12/15(月) 04:39:50.54
ID:A0qppQAI0
―――何時からだろうか。
妙なすれ違いがあった。
ブルマはよく、俺に「浮気しただろ」だの「女の子にモテようと思って」だのと怒ってばかりだった。
正直俺は他の女に興味なんてなかったし、ブルマにふさわしいようにと努力ばかりしていた。
見た目もそうだし、頭もそうだし、体もまた。
不慣れなものが多すぎる俺を、ブルマは優しく教えてくれた。
俺もまた、俺が知っていることをブルマに教えてきた。
キスも、デートも、セックスも。
俺は何も知らない男だった。
セックスはブルマもしらない、大人の行為であったが。
キスぐらい、デートぐらい、とブルマは積極的に教えてくれた。
・・・だから、キスも上手くなったんだろう。
4:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2008/12/15(月) 04:42:27.96 ID:v6WIZySJO
ムチャしやがって・・・
5:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2008/12/15(月) 04:44:35.93
ID:A0qppQAI0
ブルマは優しい女だった。 それでいて激情をもっていた。
少しの疑惑があれば、彼女は「浮気だろ」と怒りを爆発させて俺を責めた。
俺は真剣に怒る彼女を見て、苦しみ嘆く彼女を見て、何も言えずに謝った。
―――たとえそれが彼女の勘違いであってもだ。
仲直りをする時は、いつもキスをする。
そのあとズルズルとセックスをする。
仲直りのセックスほど、燃えるのだとブルマは笑って言っていた。
反面、俺は憂鬱になった。
嫌いな訳じゃない。
ただ、このような繋がり方が正しいかは俺にはわからなくて―――
また、いつもの癖が始まった。
理由は、俺の帰りが遅かったから。
いつもは連絡をいれるのだが、その日は忙しくて入れる時間が無く
結果的に朝帰りになってしまったからだ。
6:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2008/12/15(月) 04:49:03.18
ID:A0qppQAI0
「どうせ違う女の家にでも泊まってきたんでしょ?!」
彼女は泣きじゃくりながら、俺に向かって物を投げる。
花瓶、枕、写真立て、ペンチ、雑誌・・
近くになればなんでもありだ。
俺は避けながら、言い訳まじりに謝る。
「ごめん、ごめんって! 仕事が立て込んでて連絡いれれなかっただけだって!」
「嘘おっしゃい! どうせ女と仲良くセックスでもしてたんでしょ?!」
泣き叫びながら彼女は言う。
俺は違う、と言うけれど彼女は聞かない。
ひたすら、泣いて責めるだけなのだ。
「聞けよ、ブルマ!」
俺は彼女を押さえこんで怒鳴る。
そうすると、彼女は黙るんだ。
9:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2008/12/15(月) 04:51:54.36
ID:A0qppQAI0
「俺はそんな事してない。 絶対にだ。」
俺は真剣に言う。
彼女は泣きながら、『本当・・?』と聞く。
弱弱しい、今にも消えそうな声で。
「ああ」
小さく返事した後に、俺はキスをする
彼女は泣きながら、キスで返してくれる。
いつものパターンだ。
・・・それでも、俺は幸せだった。
きっと、それが幸せなんだと心が勝手に決めていたんだ。
―――俺が死んだとき、それが壊れたんだ
12:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2008/12/15(月) 04:56:47.20
ID:A0qppQAI0
死んだとき、彼女は泣いてくれた。
嬉しかった。嬉しくて、もう一回死んでもいい!と蛇の道、叫んでしまうぐらいに。
界王様のとこで修行している間、俺はブルマの事ばかり考えていた
早く、お前に会いたい―――
そんな、小さな悲しみをひとつこぼしては修行に励んだ。
帰ったら、きっと極上の笑顔と甘いキスで出迎えてくれる
そう信じて俺はその日を夢みたんだ。
生き返った後、そこにいたのはかつての強敵だった
俺は恐怖した。でもそれ以上に。
彼女と会える喜びのほうが大きかったんだ。
「ヤムチャ―――!」
「ブルマ!!」
しっかり抱き合った後、キスをする。
幸せだった。 何も変わらぬ彼女が一段と綺麗に見えて―――。
ただ、愛しかった。
15:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2008/12/15(月) 05:01:04.40
ID:A0qppQAI0
生き返った後、生活は昔と同じように戻った。
俺は仕事をして、彼女のふさわしい男になるためにがんばった。
彼女は彼女で、自分の仕事に精を出していた。
すれ違いが多くなり始めてはいたが、夜は一緒に過ごした。
セックスしない日もあったが、それでも彼女は幸せそうに笑っていた
だから、この日常が変わらないものだと思っていた。
その日、俺は仕事が遅くなると彼女に伝えると電話を切った。
この仕事が終われば、俺は彼女に言うことができる。
『結婚しよう』
とびっきり上等なレストランで言う言葉。
そして渡そうと決心した、小さな指輪。
彼女の小遣いで買えるような、小さい石の指輪。
俺の2年分の給料の結晶だ。
17:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2008/12/15(月) 05:04:40.44
ID:A0qppQAI0
「早く、言いたいな。」
独り言にしては大きな声だろう。
でも構わない。 今は幸せなんだから。
眠い目をこすって、俺は仕事を続ける。
夜はまだ始まったばかりだ――――
「許して。」
彼女はこう言った。
俺はなんのことはわからないまま、返事できなかった
「許してちょうだい、ヤムチャ」
彼女は涙を流しながら言う。
そして、指輪をはめずにレストランから出るのだ。
俺は置かれた指輪を見つめたままだった。
彼女を追えずに、ただそこに座ったまま・・・。
18:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2008/12/15(月) 05:08:32.85
ID:A0qppQAI0
『許してちょうだい』
君は、俺に何かしたのか?
俺は、君に何かしたのか?
わからない、わからないんだ。
指輪がむなしく光っていた。
その光が妙に頭にこびりついて・・・。
その後、彼女は俺に会わなくなった。
理由はわからない。 彼女の母親も、父親も何も言わないからだ。
電話すらでてくれない。
彼女の謝罪の言葉ばかりが頭をかすめる。
俺は何をしたのか。
結婚、それが彼女にとって酷だったのか。
そう思うと、俺は罪悪感に襲われて、仕事に手がつかなかった。
20:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2008/12/15(月) 05:11:38.50
ID:A0qppQAI0
『許してちょうだい』
今なら、その理由が分かる。
彼女が言った言葉、それは。
「ヤムチャ、私の子よ。」
「でも、あなたの子じゃない。」
「この子は。」
彼女は泣きながら言う。
この子は、ベジータの子なんだと。
「・・・堕ろせなかった。」
「殺すことなんて出来なかった・・!」
彼女は泣きながら言う。
俺は小さく笑って、彼女に言うんだ。
「なんで泣くんだよ、おめでたい事じゃないか。」
「大事にしろよ。 お、男か?きっと強くなるぞ~」
俺は笑う。 心の中はどしゃぶりの雨だというのに。
23:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2008/12/15(月) 05:14:44.27
ID:A0qppQAI0
「名前は、トランクス」
「名前をつけたのはパパなの。」
彼女は泣きながら言う
子供は、母親が泣いてるもんだからつられるように泣きはじめた。
俺はあわてて、あやす。
「ほら、ブルマ泣くな! トランクスが泣いてるぞ!」
「でも・・でも・・・」
「いいから、笑ってやれ! 子供を泣かす親があるか!」
俺はあやしながら言う。
彼女は無理やり笑って、一緒にあやす。
そうだ、君は笑ってるほうがいいんだよ。
24:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2008/12/15(月) 05:17:31.31
ID:A0qppQAI0
暫くしてから、彼女から連絡があった。
『東の都で話そう』
『そこで決着をつけよう』
と
俺は、それを了解した。
覚悟は決めていた。
俺は結局ふさわしい男にはなれなかった。
俺は強くはないし、金もない。顔は・・まぁ自信はあったが、駄目だった。
彼女には強くてしっかりした、それでいてちょっとは男前なやつがお似合いなんだ。
ベジータほど適任な男は居ないだろう。
悔しいけど、負けた。 悔しいけど・・・な。
29:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2008/12/15(月) 05:22:39.61
ID:A0qppQAI0
東の都、そこは比較的落ち着いた都会だった。
俺にとっては、苦い思い出が転がる場所でもあったが。
指定したの喫茶店は、初デートの場所でもあった。
彼女らしい、だなんて言いはしない。
―――その喫茶店は、若い俺達には窮屈な場所で
今の俺達にとっては広すぎる場所だった。
流れる音楽が、ムードを作ってくれる。
若い俺達には、それがくすぐったかった。
今の俺達には、とても悲しくて・・・。
「・・・私が」
彼女は、口を開く。
彼女は下を向いたまま言う。
「私が妊娠したのは、ベジータが悪いんじゃないの。」
「私が、ちゃんと避妊しないから悪かったの。」
「私が、私が全部悪かったのよ・・!」
彼女は言う。
彼女は優しい女だ。 それでいて酷い女。
そう言われたら、ベジータを責めれない。
君がすべてを被るつもりなんだろう?
34:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2008/12/15(月) 05:26:58.53
ID:A0qppQAI0
「・・・言うなよ」
俺は笑う。
手はポケットの中漂う。
穴があいたポケット。 すかすかして気持ち悪いポケット。
彼女は言う。
泣きそうな声を、一生懸命絞り出して言う。
「あの夜、アンタが帰ってこなくて。」
「偶然ベランダに出たの。 そしたら」
「ベジータがいたの。 アイツ、すごくさびしそうな顔をしてた。」
「・・だから、話し相手にでもなってやろうと思って。」
彼女は言う。
俺は笑いながら聞く。 彼女のラブロマンスを。
「抱かれるつもりなんてなかった・・・!」
「ただ、アイツの眼が、忘れられなくて。」
彼女は言う。
俺は笑いながら、口を開く。
「幸せになれよ、親友。」
36:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2008/12/15(月) 05:29:08.53
ID:A0qppQAI0
「え・・・?」
彼女は顔をあげる。
俺は笑ったまま、安いコーヒー代を置く
そしてこう言うんだ。
「ジョークぐらい言わせろよ・・な。」
さようなら、俺の初恋
さようなら、俺の青春
幸せだった。全てが。
38:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2008/12/15(月) 05:34:05.13 ID:Gbgwaf4DO
ヤムチャしやがって…
39:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2008/12/15(月) 05:34:22.20
ID:A0qppQAI0
雨は止まない。 俺は空を見る。
真っ暗で、空のひとつも見えやしない。
俺は息をめいっぱい吸う。
そして大声で叫ぶんだ。
「馬鹿野郎ぉおおおお!!!」
幸せになれよ、親友。
俺の分よりも、幸せになってくれ。
そうしなきゃ、俺が報われない。
この歳まで独身貫いた俺が・・さ。
少しした後に、雨は止んだ。
髪からしたたり落ちる水は、温かくて。
家までもう少し。 相棒はなんていうだろうか?
きっと、慌てたようにタオルを持ってきて、泣くんだろうな。
41:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2008/12/15(月) 05:37:10.17
ID:A0qppQAI0
「ジョークぐらい言わせろよ・・か。」
本当はジョークなんかじゃない。
愛していたから、言ってしまったんだろう。
恋人は無理でも、親友ぐらい言わせてくれ。
君のそばに居たいんだ、少しでも・・。
未練がましい男だろう?君が知ったら笑うだろうから、言わないでおくけどさ。
「・・・失恋記念日に、乾杯ってか。」
そう言って、家のドアを叩いた。
中には、俺の相棒が待ってる。
ビール冷えてるかな、なんておっさんくさいことを思いながら
今、扉を開くのを待っている。
END
43:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2008/12/15(月) 05:38:57.71
ID:A0qppQAI0
言っておくが、俺はブルマが嫌いなわけじゃない
それ以上にヤムチャが好きなんだ、わかってくれ
よしブルマ編いくか
45:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2008/12/15(月) 05:42:20.55
ID:A0qppQAI0
「・・・300ゼニー」
私は、彼が置いていったコーヒー代を口に出してみる。
若い頃、あなたったらなけなしの給料から出してくれたわよね。
一杯150ゼニーのコーヒー、無理しちゃってサ。
それでも幸せだったのは、愛されてるって確信があったから。
何時からだろう、あなたを素直に愛せなくなったのは。
こんな女だから、あなたに振られたのかしら。
「ジョークぐらい言わせてよ・・ね。」
あなたの残り香が、鼻をくすぐる。
雨は止まない。 あなたは、この雨の中歩いているのかしら・・?
46:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2008/12/15(月) 05:45:44.12
ID:A0qppQAI0
怖かった。
あなたが私の元を去っていくのが。
理由はいっぱいあった。
闘い、女性関係、交友関係・・・
言い始めたらキリがない。
幸せな反面、苦しくてしょうがなかった。
泣きながら、喚くなんていやな女だったね。
それでもあなたは愛してくれた。
怖かった。
あなたを盗られるじゃないかと。
あなたほどの男、私にはもったいないのよ。
昔願った、Mr.ドリーム。
手に入ったとたん、襲い来る恐怖。
夢の中だけでよかったのかもしれない。
そう、夢だけで・・。
49:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2008/12/15(月) 05:48:57.12
ID:A0qppQAI0
私たちのケンカはいつもワンパターンだった。
私が一人怒鳴り散らして、あなたがなだめて、キスをする。
そしてずるずるとセックスをするのだ。
私は「燃える」だなんて言ってごまかすけど
本当はただ、怖かっただけなのだ。
「ブルマ・・・大丈夫だ。」
あなたは優しくささやく。
教えて、あなたの優しさはどこから来るの?
私の苦しみはどこへいくの?
私はわからないまま、あなたを愛した。
――――あなたが死んで、全てが変わった。
51:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2008/12/15(月) 05:52:25.88
ID:A0qppQAI0
ベジータ、最初は怖かった。
それでいて、美しかった。
孤独が似合う男で、でもどこかさびしそうで。
私は兄弟ができたかのように優しく構った。
ある夜、ヤムチャは帰らなかった。
不安で眠れない夜、外に出る。
そこにはベジータがいた。
さびしそうに空を見上げるアンタ。
「ね、話さない?」
私は誘う。
アンタは嫌そうに、舌打ちだけを返す。
私は構わず話し続ける。
話は、途中から色を変え始めた。
52:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2008/12/15(月) 05:54:36.80
ID:A0qppQAI0
「うふふ、本当に困った男なのよ!」
「本当に・・・」
何が悲しいのか、涙があふれ出た。
ヤムチャを想うと、涙しか出ないのだ。
「や、やだ、あたしったら・・」
「ごめんね、私もう寝る・・」
「待て、女」
アンタは私を止める
私は泣きながら、アンタの眼を見つめる。
眼に惹きつけられた。
寂しさと熱を灯した眼に。
53:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2008/12/15(月) 05:56:59.38
ID:A0qppQAI0
3流のメロドラマみたいな展開。
今、私はこの男に抱かれている。
激しい愛撫に流されていく。
激しい攻めに流されていく。
激しい光に飲み込まれていく―――。
真っ白な世界の中、誰かが呼んでいる。
その声は誰なのか・・・私にはわからない。
私の中に、何かが溢れ出た。
54:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2008/12/15(月) 05:59:27.92
ID:A0qppQAI0
「う、うそ・・」
私は自覚する。
私は、駄目な女なんだと。
泣いたってどうにかなる訳ないのに。
涙だけが出て、止まらない。
シャワーを浴びて、服を着替えて
あなたの帰りを待つ。
あなたは幸せそうな顔で帰ってくるんでしょう。
そして、キスをして少しだけ眠るの。
・・・この唇はもう、あなただけのものじゃない。
そして、この体も・・。
そう思うと、私はあなたに会うこともできない。
それなのに。
56:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2008/12/15(月) 06:02:44.21
ID:A0qppQAI0
「結婚してほしい」
私は狂いそうになった。
あなたは残酷な男ね
頭の中、いろんな事がぐるぐる回る。
私は泣きながら、レストランを出る。
待ち望んで結果、少しばかり遅かった結果。
ぐるぐるといろんな事が回ってる。
―――私は、貴方に会えない。
そう言って、あなたを追い出した。
酷い女、そう思ってくれていいの。
いっそ、嫌いになってくれたら・・・
そう呟いて、私は泣き続けた。
57:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2008/12/15(月) 06:05:58.04
ID:A0qppQAI0
気づくと、私のおなかの中に「いのち」が宿っていた。
誰の子かはわかる。 ・・・それは望んでいない「いのち」
私はどうすることもできない。
その「いのち」を殺すことなんて私にはできない。
私は黙って育てることにした。
時がたてば、全てがわかってしまう。
でもせめて今だけは・・そう思い、黙っている。
「ヤムチャ、許して・・・」
「私には殺すことなんて出来ないの。」
「たとえ、これが望まれないいのちであっても。」
私はおなかを撫でる。
中では小さな命が笑っている。
分かるの。 ・・・分かってしまうの。
60:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2008/12/15(月) 06:09:06.72
ID:A0qppQAI0
生まれた後、彼は私のところへ来た。
皆の前では笑っていたあなた。
きっと私を責めるんだわ。 彼にはその資格がある。
「私の子なの。」
「でも、あなたの子じゃないわ。」
私は酷い女。
あなたはきっと怒ってるだろうに。
泣いて謝ったって駄目だって、分かっているのに・・・
「泣くなよ」
「元気そうないい子じゃないか」
「良かったな」
優しいあなた。
私はそんなあなたを愛している。
・・・愛していた。
61:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2008/12/15(月) 06:11:42.52
ID:A0qppQAI0
「ほら、泣くなよ!子供も泣いてるじゃないか!」
「笑ってやれ、な?」
私の背中を優しく撫でた後、トランクスをあやすあなた。
私も無理やり泣き止んで、一緒にあやす。
トランクスは、嬉しそうに笑う。 ごめんね、こんなお母さんで。
ごめんね、こんな女で・・・。
「ごめん、また連絡するわ。」
そう言って、はんば強制にヤムチャを返す。
・・・別れよう。
私はそう決心した。
62:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2008/12/15(月) 06:15:12.43
ID:A0qppQAI0
指定した場所は、初デートの場所。
昔の私が背伸びして見つけた喫茶店。
大人な音楽 大人な店内
若い私たちには窮屈でつまらない場所。
それでも、私は幸せだった。 そしてあなたも。
音楽を乱すベルの音。 あなたが来た合図。
「ブルマ・・」
優しい眼で私も見つめるあなた。
最後まで、酷い男。
いっそのこと、責めてくれればいいのに。
めちゃくちゃに罵って、ほっぺぐらい叩いてくれればいいのに。
優しい男。 そんなあなただから愛せたのね。
63:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2008/12/15(月) 06:17:31.96
ID:A0qppQAI0
少し話した後に、私は別れを切り出す。
あなたは笑いながら、それを聞く。
泣きそうな私は下を向いたまま、言葉を吐き続けた。
「・・幸せになれよ親友。」
彼は優しい声でそういった。
「え?」
私は顔をあげる。
彼はポケットから、300ゼニーを出すとそれを机に置いた。
そして笑いながら言うのだ。
「ジョークぐらい言わせろよ・・・な」
65:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2008/12/15(月) 06:21:25.89
ID:A0qppQAI0
雨は止み始め、私も喫茶店をでる。
「冗談にしてはキツすぎるわよ・・馬鹿。」
私は歩きながら呟く。
あなたは優しすぎたのよ。
それでいて・・・。
「ばいばい、Mr.ドリーム。」
私は、夢見る少女を捨てた。
夢で会った理想の男性はもう居ない。
大人の階段を上りきった私にはもう必要ないの。
冷たい女かもしれないけど、構わない。
夢見たあの頃より、空は光輝いていた。
END
66:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2008/12/15(月) 06:21:38.56 ID:gReO+3xMO
いつも明るいけどこんな鬱な事もヤムチャは乗り越えて…
来年から俺も本気出す
106:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2008/12/15(月) 07:14:03.84
ID:A0qppQAI0
このスレを見て、ヤムチャの見る眼が少しでも変われば幸い
109:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2008/12/15(月) 07:27:27.95 ID:r/wNcmTA0
>>106
おつ
108:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2008/12/15(月) 07:27:09.64 ID:r/wNcmTA0
こんなかっこいいヤムチャ初めて見ましたwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
ヤムチャさん今までバカにしてすいませんでしたwwww
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