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アニメSSまとめ速報

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アニメSSまとめ速報 TOP  >  兄姉弟妹 >  弟「ねえ兄ちゃん! 腕を引きちぎってよ!」

弟「ねえ兄ちゃん! 腕を引きちぎってよ!」

1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/03(木) 01:43:36.38 ID:XJEkJ5so0

弟「ねえいいでしょ! お母さんには内緒にするから!」 

弟「あ、大丈夫! お父さんにも内緒にするよ!」 

弟「お願いだよ兄ちゃん! 見たいんだよー!」 

兄「またそんなわがままを言う」 

弟「だって、そんな事兄ちゃんにしかできないんだよ?」 

兄「父さんだってできるだろ」 

弟「お父さんもすごいけど、兄ちゃんのほうがもっとすごい!」 

兄「仕方ないな……」 

ブチィッ 

9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/03(木) 01:47:56.11 ID:XJEkJ5so0

ビチビチ 

弟「わあ! ちぎれた! 動いてる!」 

兄「これ結構痛いんだぞ……」 

兄「……フンッ!」 

ニョキ 

弟「わあ! 生えた! すごい!」 

兄「そこは『気持ち悪い』とか言うところではないか」 

弟「あ、兄ちゃん! ちぎれた腕が……!」 

ムニムニ 

弟「すごいや! ヒトデになったよ!」 

兄「うーむ、いつ見ても気持ち悪い」 



11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/03(木) 01:49:26.83 ID:Y6sNIPAE0

なんでヒトデだよ 



16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/03(木) 01:51:53.07 ID:XJEkJ5so0

弟「ねえ兄ちゃん」 

兄「なんだ弟よ」 

弟「このヒトデは、兄ちゃんじゃないの?」 

兄「お前にはこれが俺に見えるのか」 

弟「でも元兄ちゃんの腕だよ」 

兄「切り離した時点でこれは俺ではないのだ」 

ウネウネ 

兄「ただのでっかいヒトデだ」 

弟「……」 

弟「じゃあさ、もしもの話なんだけど」 

弟「兄ちゃんの頭を割ったらどうなるの?」 



19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/03(木) 01:53:31.95 ID:MUZQls4y0

おい、おう 



22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/03(木) 01:54:53.36 ID:XJEkJ5so0

兄「考えたことはあるが、やりたいとは思わないな……」 

兄「おそらくだが、俺は死ぬのではないかと思う」 

弟「腕とか生やせるのに?」 

兄「うむ、今までの経験からして頭はマズい気がするのだ」 

兄「どうやら、頭との接続を絶たれた俺の肉片はヒトデへと成長するらしい」 

兄「ならば頭が壊れたらどうなるのか、想像することすら憚られる」 

弟「はば……何?」 

兄「怖くて想像したくないという事だ」 

兄「俺は痛いのよりもずっと、死ぬのが怖い」 



24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/03(木) 01:58:25.91 ID:XJEkJ5so0

兄「しかしどうやら、お前は俺と違ってヒトデの血が薄いようだな」 

弟「そうなのかな」 

兄「まだ怪我が治らないのか」 

弟「うん……お母さんに薬、塗ってもらったよ」 

兄「そんな小さな傷、俺や父さんならば一瞬だというのに」 

弟「やっぱり兄ちゃんはすごいよ」 

兄「お前だってすごいさ」 

兄「俺と違って、お前の腕は軽く引っ張ったくらいじゃちぎれない」 

弟「でも兄ちゃんは簡単に腕を生やせるじゃない」 

兄「簡単なようで簡単ではないのだよ」 

弟「ふうん」 



25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/03(木) 02:03:12.80 ID:XJEkJ5so0

兄「人と違うということは、それだけで大変な事なのだ」 

兄「もしお前がこの先この能力を手に入れても、決して人前で使ってはいけないよ」 

弟「どうして? きっとみんな驚くよ!」 

兄「驚くからさ」 

弟「すごい! って言われるよ!」 

兄「だとしても、いや、だからこそ駄目なのだよ」 

弟「わからないよ、どうして?」 

兄「……ええと」 

兄「……人はな、ビックリさせすぎると心臓マヒで死んでしまうのだ」 

弟「そうなんだ……!!」 

兄「さあ、そろそろ寝なくてはいけない、明日からはお前も学校に行くのだから」 

弟「うん!」 



29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/03(木) 02:07:01.96 ID:XJEkJ5so0

…… 

母「さあ、気をつけてね。いってらっしゃい」 

弟「うん! 兄ちゃん、早く!」 

兄「そんなに急いでも、転ぶだけだぞ」 

弟「もう小学生だもん! 転ばないよ!」 

母「お兄ちゃん、ちゃんと学校まで連れて行ってあげてね」 

兄「……連れて行った後が、一番の問題なんだが」 

母「なあに?」 

兄「……なんでもない」 

兄「行ってきます」 

弟「いってきまーす!」 



30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/03(木) 02:12:22.88 ID:XJEkJ5so0

…… 

女子A「……やだ、こいつ生きてたの?」 

男子A「なんでまたヒトデ男と同じクラスなんだよ……」 

女子B「なんかくさーい」 

女子C「もうやだ、学校来るのやめようかな」 

男子B「あれがヒトデ男……?」 

男子C「そうだよ、ちょっと見てろ」 

スタスタスタ 

男子C「よう、ヒトデ男」 

兄「……」 

男子A「……おーっと、手が滑った」 

ドスッ 

兄「……うぐっ……!!」 



31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/03(木) 02:17:07.74 ID:XJEkJ5so0

女子A「きゃぁっ!!」 

男子B「指! 指落ちたぞ!」 

兄「な、何を……」 

男子C「悪いな、事故だよ事故」 

女子D「せ、先生呼んだほうが……」 

男子A「なーに、大丈夫だって」 

男子C「ほら、見てみろよ」 

ムニムニ 

男子B「……ヒトデになった!!」 

女子B「気持ち悪い! やめてよ!」 

男子C「何度見ても気持ち悪りいなー」 

兄「……」 



33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/03(木) 02:20:53.95 ID:XJEkJ5so0

男子A「ほら、何我慢してんだよ」 

兄「……何を」 

男子C「さっさと生やせっつってんだよ」 

兄「……そんな事……」 

男子A「だからほら、治さないと痛いんだろ?」 

グリグリ 

兄「……!!!」 

男子A「だーかーらーさー」 

男子A「……我慢は毒だぜ?」 

兄「ううっ……」 

……ニョキ 

女子D「……う……おえっ」 

ビシャッ 



36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/03(木) 02:24:25.22 ID:XJEkJ5so0

女子D「ううっ……」 

女子A「ちょっと、大丈夫!?」 

女子B「男子が変な事するから!」 

男子A「俺達は別に悪いことしてねえよ、なー?」 

男子C「悪いのはヒトデ男だよなー」 

男子C「あーあ、吐かせてやんのー」 

男子A「キモいのは罪だよなー」 

兄「……」 

男子C「ほら、何座ってんだよ」 

男子A「おら、立てよ!」 

ドカッ 



39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/03(木) 02:26:58.70 ID:XJEkJ5so0

…… 

山田君(仮)「ねえ、もしかして君の兄ちゃんって六年生?」 

弟「うん、そうだよ!」 

弟「優しくて物知りだし、えっと……すごいんだよ!」 

山田君(仮)「そっかー」 

山田君(仮)「ぼくのお兄ちゃんもね、六年生なんだよ!」 

山田君(仮)「五年生のときは、君の兄ちゃんと同じクラスだったって!」 

弟「本当!?」 

山田君(仮)「うん、だからさ、その、お願いがあるんだ」 

弟「お願い?」 

山田君(仮)「うん!」 



41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/03(木) 02:29:53.91 ID:XJEkJ5so0

…… 

ウネウネ 

兄「……」 

兄「……気を失ってたのか」 

ウネウネウネウネウネウネウネ 

兄「ヒトデが売りものになったら、大儲けだな……」 

兄「……」 

兄「……そうだ」 

兄「弟を、迎えに行かなければ……」 

ウネウネ 



43:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/03(木) 02:34:22.88 ID:XJEkJ5so0

…… 

ハナタレ「さっき山田君(仮)とトイレに行ったよ?」 

兄「山田君(仮)?」 

ハナタレ「ええと、山田君(仮)は弟君と席が隣なんだよ」 

兄「トイレか、ありがとう」 

ハナタレ「どういたしまして!」 

スタスタスタ 

兄「……」 

兄「ちゃんと、友達ができたのか」 

兄「……」 

兄「そうか、よかった……」 



44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/03(木) 02:37:41.88 ID:XJEkJ5so0

…… 

グスッ……グスッ…… 

兄「……?」 

ギィ 

山田君(仮)「ひっ……!」 

兄「……ど、どうしたんだ……?」 

山田君(仮)「違うの……」 

山田君(仮)「あの……生えるってお兄ちゃんが言ってて……」 

兄「……血……」 

山田君(仮)「だけど、生えなくて……」 

兄「……!!」 



46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/03(木) 02:42:50.04 ID:XJEkJ5so0

兄「弟!!」 

弟「……にい……ちゃ……」 

兄「おいッ!」 

山田君(仮)「ひっ……」 

兄「先生を……いや、救急車……なんでもいい、人を呼べ!!」 

山田君(仮)「……あの……」 

兄「早くッ!!」 

山田君(仮)「あ……ああ――」 

ドテッ 

山田君(仮)「せんせ……せんせい!!」 

ダッ 



48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/03(木) 02:45:48.47 ID:XJEkJ5so0

兄「すぐに、すぐに病院に連れて行ってやる!」 

弟「にい、ちゃん……」 

兄「ああ! 兄ちゃんだ! 大丈夫だからな!」 

弟「……」 

兄「お、おい……!」 

弟「……にいちゃん、みたいには……」 

弟「できな、かったよ……」 

兄「……!?」 

兄「何を言ってる……!?」 

弟「……しっぱい、しちゃった……」 

弟「……」 

兄「おい……おいッ!!」 



49:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/03(木) 02:49:05.32 ID:XJEkJ5so0

…… 

兄「……」 

兄「……俺の、部屋……」 

兄「……」 

兄「夢……?」 

兄「……そうだ、弟……」 

ギィ 

ペタペタ ペタ 

母「……」 

兄「なあ、母さん」 

母「……なあに?」 

兄「弟は、どこ?」 

母「……」 



50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/03(木) 02:52:22.11 ID:XJEkJ5so0

兄「今日から学校だから」 

兄「あいつ、楽しみにしてたから」 

母「……」 

兄「……父さん、家に居るなんて珍しいな」 

父「……今日くらいはな」 

兄「弟が、釣りがしてみたいって言ってた」 

父「……そうか」 

兄「俺は、うまくできないから」 

兄「カモメに襲われるから」 

兄「父さんが連れて行ってくれよ」 

父「……俺も、襲われるんだがな」 

兄「ねえ、父さん」 

父「……なんだ?」 

兄「あそこに居る人は、誰?」 

父「……お前の、おじいちゃんだ」 



51:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/03(木) 02:56:40.42 ID:XJEkJ5so0

兄「……はじめまして、おじいちゃん」 

爺「はじめまして、ではないよ」 

兄「そうなんですか」 

爺「お前さんはまだ小さかったからな、覚えていなくても仕方ない」 

兄「……あの」 

爺「なんだい?」 

兄「俺……僕の弟を見ませんでしたか」 

爺「ああ、お前のお母さんによく似てる子だね」 

兄「はい、今日から学校に行くので」 

爺「まだ小さいのに、可哀想にね」 

兄「弟は、学校を楽しみにしています」 

爺「そうかい、残念だね」 

兄「……?」 



53:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/03(木) 03:01:38.12 ID:XJEkJ5so0

爺「お前さんの弟なら、そこだよ」 

兄「……」 

兄「まだ、寝てるんですか?」 

爺「違うよ、よく見てごらん」 

兄「……」 

爺「頬に、触ってごらん」 

兄「……」 

ペタ 

兄「……」 

ペタ ペタ 

兄「……そうか」 



55:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/03(木) 03:04:39.55 ID:XJEkJ5so0

…… 

兄「そんなはず無いだろ!?」 

医者「蘇生を試みましたが――」 

兄「だってほら……見ろよ!」 

ナース「君、何を……!」 

ブチッ 

兄「……ぐッ!!」 

ニョキ 

兄「ほら……! 俺はこんな簡単に腕を生やせるんだ……!」 

兄「俺の弟は、そのくらいで死ぬはず無いんだ!」 

医者「できる限りのことは……」 

兄「死ぬはず、無いんだよ!!」 

ガァン 



57:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/03(木) 03:10:51.84 ID:XJEkJ5so0

兄「どうして、あいつが……!」 

ナース「お、落ち着いてください……!」 

兄「嘘だ、俺にはわかる! 嘘に決まって――」 

ドカッ 

兄「うぐっ……!」 

ナース「あ……あなたは……」 

犬「……病院で暴れるのは、よくないんじゃないか?」 

兄「い、犬……なんで病院に犬!?」 

犬「おいおい……」 

犬「お前だって、似たようなもんだろ?」 

兄「……!!」 

犬「もっとも、俺はわりと犬だがな」 



58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/03(木) 03:13:32.72 ID:XJEkJ5so0

犬「見たところお前はヒトの血が多めに見えるが、まあそんな事はどうでもいい」 

兄「……な、何だって言うんだ……」 

医者「あの、犬さん、彼も落ち着いたようですし……」 

犬「おっと、そうだな、すまなかった」 

スタッ 

犬「詳しい事情は知らないが……まあ、なんとなくはわかっているつもりだ」 

犬「ともかく、病院で怪我人を出すのはやめたほうがいいと俺は思うぜ」 

犬「じゃあな」 

ガラッ 

兄「……」 

ドタドタドタ 

…… 

ガラ…… 

母「……」 



59:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/03(木) 03:16:55.21 ID:XJEkJ5so0

兄「……母さん」 

母「……」 

母「……そう……」 

ペタ 

母「……健気な子ね」 

母「最期まで、笑顔で居ようとしたのね」 

兄「……」 

母「……あの……」 

母「ありがとう……ございました……」 

医者「いえ、我々は……」 

医者「……失礼させて、頂きます」 

母「ありがとう、ございました……」 

ガラッ 



61:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/03(木) 03:20:26.92 ID:XJEkJ5so0

兄「……」 

兄「……なあ、母さん」 

母「……なあに」 

ペタ ペタ 

兄「……弟は、俺のことをすごいって言ってくれたんだ」 

母「……」 

兄「俺みたいになりたいって、言ってくれたんだ」 

母「……そう」 

兄「……」 

母「……この子は、馬鹿な子ね」 

母「……どう頑張っても、あなたみたいな事はできないのに」 

兄「父さんの血を、受け継ぎ損ねたのかな……」 

母「……」 

母「……受け継ぐはず、ないじゃない」 



62:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/03(木) 03:24:11.86 ID:XJEkJ5so0

…… 

兄「……あの、聞いてもいいですか」 

爺「なんだい」 

兄「こいつは……俺の弟の、本当の父親は」 

兄「……本当にあなた、なんですか」 

爺「……そのはずだな」 

兄「弟は、友達の期待に応えて、俺の真似をしようとしたんです」 

兄「ただの人間なのに、腕を引きちぎったんです」 

爺「ああ、そう聞いてる」 

兄「最初からただの人間だと教えていれば、そんな事はしなかったはずです」 

爺「……そうかもしれない」 

兄「お前たちの嘘が、よってたかって弟を殺したんだ」 



63:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/03(木) 03:27:58.99 ID:XJEkJ5so0

兄「お前たちが殺したのに……そんな悲しそうな顔をしている」 

兄「揃いも揃って、被害者みたいな顔をしている」 

爺「……フン」 

爺「それは、お前も同じ事だ」 

兄「何を……」 

爺「この子は、お前の真似をしたのだ」 

爺「『いつか僕も兄さんみたいになれる』、そんな期待を持たせたのはお前だ」 

爺「どのツラ下げて私を非難しようというのか」 

父「……少し、静かにしてくれ」 

爺「お前もそうだ、老いぼれに女房を寝取られても、顔色ひとつ変えない」 

爺「そうして平気でいるのがさぞ正しいかのように振舞う」 

爺「いい父親でこそ無かったようだが、せめて正しい人間であろうとしたのか?」 

爺「半分ヒトデのくせに」 



65:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/03(木) 03:30:43.85 ID:XJEkJ5so0

母「……」 

父「……出て行ってくれ」 

爺「死んだのは私の息子だ、何故私が出て行かねばならない」 

父「こいつは、俺の息子だ」 

爺「そこの女にも聞いてみろ、こいつが誰の息子かを」 

母「……」 

父「ここは、俺の家だ」 

爺「それはまた奇妙なことだな」 

爺「お前の家なのに、お前の居場所が無い」 

母「……」 

母「……お願い、もう……やめてください」 

爺「お前は四六時中、何をしてるんだったかな」 

爺「朝から晩まで海でボーっとして、それでどうやってこいつらを養ってるのだ?」 

父「……」 



66:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/03(木) 03:33:28.89 ID:XJEkJ5so0

爺「私から金をせびってる身分だということを、忘れてもらっては困る」 

爺「お前達が泣いて頼むから、仕方なく金を出していたのだ」 

爺「今でも覚えているぞ」 

爺「『ヒトデ男など、誰も雇ってはくれません』とな、言い訳も甚だしい」 

爺「少し出し渋れば、色仕掛けなどと古臭い手を使う」 

母「私は、そんな事……!」 

爺「よく聞いておけよヒトデ男二世よ」 

爺「お前の父は、女房を金で売ったのだ」 

兄「なっ……」 

父「……」 

爺「お前を育てるため、などとそれらしい理由を立ててはいるが……」 

爺「結局のところ、そうだ、金なのだよ」 



67:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/03(木) 03:35:37.22 ID:XJEkJ5so0

爺「ふうむ」 

爺「……随分と、静かになったな」 

爺「こういう雰囲気は好きではない、私は失礼させてもらう」 

爺「もう会うことも、無いだろう」 

ガチャ 

父「……」 

父「……すまなかった」 

兄「……何で、謝るんだ」 

兄「人間ってのは嘘つきだから」 

兄「今のも、全部嘘だって知ってるから」 

母「……」 

兄「ちゃんと、知ってるから」 



69:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/03(木) 03:39:03.85 ID:XJEkJ5so0

母「……ごめんなさい……」 

父「……」 

兄「本当に、人間っていうのは嘘つきだらけだ」 

兄「おまけに意地悪で、本当にタチが悪い」 

父「……そんな事はない」 

兄「それだって嘘だ、本当に嫌になる」 

兄「俺は、人間が嫌いだ」 

兄「人間として生きてる自分も、心底嫌いだ」 

母「……」 

兄「だけど、嫌になる」 

兄「俺は何よりも、死ぬのが怖い」 



70:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/03(木) 03:41:07.22 ID:XJEkJ5so0

母「……お願いだから、やめてちょうだい」 

母「あなたまで居なくなったら、お母さんは……」 

兄「勘違いしないで、母さん」 

兄「俺は、死ぬのは本当に怖いんだ、そんな事考えていないよ」 

父「……」 

母「なら、どうしてそんな事を……」 

兄「人間として生きることを、やめようと思うんだ」 

兄「ヒトデとして、暮らしたい」 

父「……俺も、以前はそう考えていた事もある」 

父「だが、俺にもお前にも、ヒトの血が流れているんだ」 

兄「そんな事関係ない、父さんにできなくったって、関係ない」 

兄「俺はもう人間じゃない、ただのヒトデになるんだ」 



72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/03(木) 03:43:10.50 ID:XJEkJ5so0

…… 

ヒトデ「……」 

ヒトデ「……」 

ムニムニ 

ヒトデ「……」 

ウニウニ 

犬「……」 

犬「お前、こんな所で何してるんだ」 

ヒトデ男「……ヒトデになるのって、難しいな」 

犬「まあ、そりゃあな」 

ヒトデ男「お前は、ちゃんと犬になってるな」 

犬「こんな男前な犬が居るかよ」 

ヒトデ男「……自分で言うか」 

…… 

おしまい 



76:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/03(木) 03:51:09.96 ID:Y+/RB4Rv0

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