1:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/25(木) 16:25:28 ID:Bfa4pa3g0
魔王「勇者...」
魔王「死して立ち続け、何を望む」
魔王「...私は楽しかった...」
魔王「お前の報告を聞いた日...心が躍った」
魔王「やっと敵に会えた...そう思ったのだ」
2:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/25(木) 16:33:21 ID:Bfa4pa3g0
魔王「初めて報告を聞いたのは...」
魔王「南の港の時か...どうしても必要な拠点でな」
魔王「精鋭含む5名を送ったのだ」
魔王「何時もの様に過ごし、何時もの様に床につく」
魔王「あの日も変わらない日常のはずだった」
魔王「あの時の側近の慌て様は見事だったよ」
3:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/25(木) 16:40:12 ID:Bfa4pa3g0
魔王「私も驚いた」
魔王「あの者は幼き時からの友でな...」
魔王「人に負けるなど...思いもしなかった」
魔王「私の心にも哀しみというものが有った...」
魔王「しかし、同時に震えた」
魔王「愉悦が込み上げたのだ」
魔王「友が死んだというのにな」
4:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/25(木) 16:48:33 ID:Bfa4pa3g0
魔王「友を失った哀しみ、敵に会えた喜び」
魔王「...その日から、お前の行動を監視する事にした」
魔王「並の者では監視すら満足に出来ん」
魔王「監視に行った者は悉く返り討ちだ」
魔王「あまりの不甲斐なさに側近自ら向かった」
魔王「...彼奴はな...死と引き換えに、お前の情報を伝えた」
魔王「見事な最後だった...」
5:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/25(木) 16:56:27 ID:Bfa4pa3g0
魔王「勇者...」
魔王「お前にも友がいたな」
魔王「戦士、魔法使い、僧侶...」
魔王「いずれも手練れの者ばかりであったな...」
魔王「はじめに魔法使いが力尽き、戦士を失い...」
魔王「城近くで僧侶を失った」
6:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/25(木) 17:06:04 ID:Bfa4pa3g0
魔王「1人になったお前は、単騎で城に入った」
魔王「城に残ったのは数名といえど精鋭ばかり...」
魔王「1人の人間がどうこう出来る者達ではない」
魔王「...そう考えていた...」
魔王「だがな...目の前のお前が全て否定した」
7:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/25(木) 17:13:32 ID:Bfa4pa3g0
魔王「なぁ...勇者...」
魔王「お前は何を望んだ?」
魔王「何の為に此処まで来たのだ?」
魔王「私と戦う為ではないのか?」
魔王「とうに準備は出来ている」
魔王「...何故...動かないのだ?」
魔王「目標が目的が...目の前に居るのだぞ?」
魔王「私が憎いだろ?」
魔王「人間の平和を夢見たのだろ?」
8:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/25(木) 17:20:14 ID:Bfa4pa3g0
魔王「...私は...何を望んだのだろう...」
魔王「世界の全て...人間のいない世界」
魔王「初まりはそうだった...」
魔王「人間に追いやられた憎しみ...祖が受けた数々の屈辱...」
魔王「全てを思いしらせる筈だった」
魔王「復讐...それが全てだった...」
9:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/25(木) 17:30:16 ID:Bfa4pa3g0
魔王「...案外退屈でな...」
魔王「側近の奴が全てお任せ下さいと言って聞かんでな...」
魔王「嬉々として働く側近を見るが日課になっていた」
魔王「なかなか賢い奴でな...」
魔王「軍事会議では、口を挟むのも憚る程だ」
魔王「そんな奴だが私は好きだった」
魔王「尊敬とも似てるかもしれんな」
10:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/25(木) 17:39:01 ID:Bfa4pa3g0
魔王「彼奴が居なくなってから大変だったぞ」
魔王「部下からも慕われていてな...」
魔王「彼奴の作戦こそ側近の意思だと語り、宥め...」
魔王「彼奴の夢を達成してやりたかった」
魔王「ある日気づいたのだ...」
魔王「復讐よりも強敵を求む事よりも、彼奴の夢、願いを...」
11:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/25(木) 17:47:05 ID:Bfa4pa3g0
魔王「我ながら笑ってしまうな...」
魔王「人間とは...魔族とは...何なのであろうな」
魔王「元は同じモノだったかもしれん」
魔王「姿形だけでなく、心が感情が...」
魔王「人間に近づいていく...」
魔王「お前が...答えを持ってくる...そう思ったのだ」
12:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/25(木) 17:54:04 ID:Bfa4pa3g0
魔王「勇者よ...」
魔王「答えてはくれぬか?」
魔王「私は1人になった...」
魔王「お前は1人で何を考えた?」
魔王「絶望の中で何を望んだ?」
魔王「わからない...私にはわからない」
魔王「私には...」
-終わり-
13:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/25(木) 17:55:46 ID:Bfa4pa3g0
短編が書きたかった。
纏めるの難しいな。
14:以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/25(木) 17:57:03 ID:ir3GldBc
乙
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